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21

蜘蛛の糸

―夜中

家の外―もとい城だから庭のような場所だが―で、双剣を振るう。
段々と空気に湿り気を帯びるこの時期は、少し動いただけですぐに汗が浮かんでくる。
それを気にも留めず、ただ無心に振るい舞い続けた。


格闘と刀は、仕込まれたのが6年。
そこから実戦経験を経てもう14年は経つ。

が、双剣は如何に実戦投入は早かったにしても1年すら満たない。
格闘や刀を振るうようには、手足のように扱うようにはまだまだ慣れが足りなかった。




「…ふぅ」
一区切りついて、双剣を仕舞う。



―貴方の欲しいものは何?

「!」

休憩とばかりに緩みかけていた気が一気に張り詰める。
見れば、目の前に立つ女が居た。

気配を全く感じなかった。というよりは、突然現れた女はあまりに全てが整いすぎて逆に不気味で。
剥き出しの肩に見える蜘蛛の刺青は、それに拍車をかける。


―貴方の望みは、何?


何より、相手の声は声として聞こえない。

「…皆で笑ってる事だ」

真顔で、静かにそう返した


―それを果たす為に必要なのは何?ゲイン・カッシュ


「…何?」


―想いや言葉だけで全てがどうにかなるわけではないのは、貴方が一番知っているでしょう?


「……。」


― 一人だけではどうしようもない事も


「力、か」
静かにその拳を見下ろす。


―さぁ、貴方の望みは何?

女が微笑む。これ以上ないというくらいに。



「俺が、望むものは―」

望まぬまま開いた口は言葉を紡いで








「…仲間と共に強くなる。悪いが、幾ら美女の誘いでもクソ喰らえな力は要らねぇな」

繋ぐはずだったそれを強引に引きちぎって獰猛に笑う。



―貴方の仲間が、そのクソ喰らえな力を欲したら?


「知らねぇよ。そいつが必要だと思うなら必要なんだろ? 俺に聞くなよ」

肩をすくめる。先程の至高の笑みはなくとも、女の顔から微笑みは消えない。

「そいつが必要と判断したなら使えばいい。それで俺らの敵に回るなら、全力で叩き潰してやるだけだ。だけど―」



無風だった辺りの草木が大きく撓り揺れる。


「もしその行動が本人の意思でなくテメェが操ったりしただけならば、テメェを食い殺しにいくからな…!」


殺意の籠もった目と言葉は容赦なく、空気を震わせて。


―あら、冷たいのね。それで、仲間も殺すのかしら


「ふざけろ」
ふん、と鼻で笑い飛ばす。

「操られたなんざ腑抜けは、殴り飛ばして目ぇ覚まさせるだけだ。馬鹿には鉄拳制裁が相場なんだよ」

握った拳を眼前で掲げて。

「そろそろ消えな。俺に構う暇あんなら、他の奴を誘惑しに行った方がよっぽど利口だぜ?」


―ふふふ

すぅ、と最後に笑みを残して女は消えた。

「…やれやれ。大体、あんな美女の誘いにのったりしたら力云々の前に紅に殺されるっつの」

何時の間にか殺意は消え、おどけたように肩をすくめる。


「しかし面倒そうだ。俺の頭がめでたくなってたわけじゃなきゃ、近い内にまた一騒動あるかもしれねぇな」

そのまま、踵を返してその背は家の中へと消えた。
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2007.07.25 14:06 
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