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終焉の頃 3

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残された期限は、日にちという単位すらあっという間に奪っていく。
移動するその時間も。何かに目を止めるその時間も。普段ならば気にする事もないその経過すら、確実に時は刻み奪っていく。

やはり、終わりが分かっているからこそ、しかもそれが間近だからこそ初めて実感するのだろうと思う。
たかだかヒトの種の一生ですら、まだ今の自分は終わりまでの残り時間を今のようには感じないのだから。


そうして過ごし失っていく時間が残す。
もう僅かに、数時間。



全ての人が行き交う、その国の門に一組の姿はあった。





「もう後数時間か」

「ああ。移動して、彼女と合流して…って考えるとそれでもあっという間だ」



騒がしい入国管理局と門から少し距離を空けて。
武官と兵が立場上、周囲に立たざるを得ない中でそこは確かに開けられた空間だった。


「ま、達者でな」

「ああ」


今更惜しみ嘆く仲ではない。
必要に口にすべき事は、行うべき事は、既に交わし終えていた。



―――いや。


「軍狼王、カムイ・ムートン」


引き返そうとしていたその背が、向き直る。



その前に、静かに片膝を付き頭を垂れた。



―――遣り残していた、最後のヒトツ。



「…我が忠義は最初にして最後。絶対にして唯一つ。」


兵が、顔だけ振り返っていたその姿勢を向き直し、正す。


「この身は理想の王がそう成り得る事を目指し進む為に、絶対にして不可欠のイージスの盾と成る事を誓い続けた」


目の前に跪く姿を、ただただ静かに見下ろす、王。


「この先、如何な距離を置こうと馳せ参じられる時とは異なり、その元を離れる事と相成っても」


腰元に結んだ、帯を解く。


「我が身はただその生涯に懸けて、一度きりの誓いを違える事はなく」



静かに抜かれる、一振りの愛刀。



「その忠義こそ我が誇りなれば、その誓いを我が刀を以って永劫と違えぬ事を」



それを頭上高く、掲げ差し出した。




金属のすれる音と共に、刃が抜かれ。
手元に残る重量が途端に軽くなる。


「お前の誓い、確かに聞き届けた。…その忠義こそ何よりも私自身の誇りとなろう」


肩に当たる金属の堅さに、頭は垂れたまま。
厳格たる王の顔は、それを以って口元を緩める。


「お前が何処に行こうと、その忠義は命絶やしても忘れまい。だから……お前は生きて、そして幸せになれ、セイリオス。唯一つ、親が子に願うとすればそれだけよ」



垂れたままの身が動く事はない。
垂れたままの頭は、その表情を覗かせる事はない。


ただ少し。少しだけ間を空けてから。

「――必ず」

それだけを、返答として口にした。











風が吹く。

静かに、ただそれは微風ではなく。

槍の穂先が交わされたその下を歩き抜けていく。
誰が指示したわけでもない、自然と紡がれた道を。





『最高の王には会えたが、理想の王には会えなかった。
 だから、俺がそうなってやろうと思う』





あの時から始まった、今なお続くその道を。




潜り抜けた門が背後で閉まっていく。

何時かに旅した時とは違う。
その誓いは変わらずも、最早会う事は叶うまいと知る。
二度と、その扉が開くまでに訪れる事は出来ないのだと。


だから振り返らずに。
自らが立てた誓いを違えぬ為に。
唯一人の主が願うそれをか叶える為に。

今再び、次への一歩を踏み出した。
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