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終焉の頃 2

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バラハンに着いて暫く。

案内された王宮の執務室では、数年前と変わらぬ姿でその席に座す王が居た。
自分が入ってきたのに気付けば、顔を上げ「おぅ、おかえり」と声を掛けられる。

それは、まるで近くの店かそこらまで行ってきたぐらいの。
“何時も”と変わらぬ台詞に、口元は緩み。

「ああ、ただいま」

と自らも返した。








それ以上、お互いに何か多くを語る事はない。
話すのはまた夜にか時間空けてからだなと、部屋を後にしようとしたところでドアのノックが聞こえる。

「カムイ様、健診のお時間です」

「ん」

ドアが開き、入ってきた医者とメイドに出ようとしていた身は自然と脇にどく。
その準備を進めようとする姿を見る俺の顔に気付き、顔を此方に向ける。

「前に倒れた時のお陰で、定期的に診断が必要だと言われてな。
 俺は大丈夫だと言ったんだが」

ご覧の有様だ、と肩をすくめてくる。

「いい加減に歳ってかァ?」

それに何時ものような冗談を口にした。
何時もであれば、「馬鹿を言うな」の類の台詞が飛んでくる。

「…そうかもしれんな。俺もまだまだだと思ってたんだが」

「――。」

だから、その台詞に対する返答とリアクションは何も考えていなくて。
こちらを見たカムイは、フンと笑む。

「なんつー顔をしとるんだ、まったく」

そう言われてハッとなり、思わず目を逸らした。


そしてそのまま、診断がありますのでと退室を促され背を向けたところで背後から声がかかる。

「今夜ウチに寄れ。クオっちも喜ぶ」

それに対し、1度だけ頷いて部屋を後にした。






夜。

カムイの家に寄り、夕食を共にしながら。
交わされるやり取りは昔から変わらないそれがあった。

ビエルという地を狼達の家として過ごしたあの頃からの。



「もう、後少しか」

「そうだな」

その時間も落ち着いて。
酒を片手に月夜を見上げながら。
そこにはもう、自分とカムイしか居なかった。

「お前はどうするんだ」

「…最初は、このまま此処で過ごしてこうかと思ったんだけどな。彼女から、最高の我儘を言われちまったからさ」

「行くのか」

「ああ。だから、今後はすぐには会えないかもな」

「ふむ」

お互いの顔を見る事などない。
ただ見上げつつ、時折杯を傾けながら言葉を紡ぐ。

「良かったのか、最後の時間で彼女の国へ行かなくて」

「ああ」

迷わなかった事はない。
むしろ迷った事も含め、残りの時間を使いきり過ぎて選ぶしかなかった。
だから、

「彼女とは、この後も時間を共に過ごしていけるからさ」

「そうか」


星が時折流れる、満天の空を見上げて。
脳裏を掠めていくのは今迄の時間。

かつて出会い。
共に駆けて。

まるで流れ星のように、今にして思う過ぎ去った時を振り返る。

時折紡がれる会話は宵に飲まれ、夜は更けていった。
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