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それは一通の果たし状

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天蒼リュクシース殿

かつては東紅演武より御身との決着つかぬまま。
その時に汚された上着がクリーニング代をお支払い頂くべく、請求書を叩き付けんが為に、一勝負申し込む。
願わくば、悔い残らぬ一時にすべく、全力を以って臨まれるべし。

セイリオス・G・カッシュ


星屑の宴の最中、行われた一戦の記録を此処に。


イメージソング
オープニング:MintJam 「Rival」
エンディング:いきものがかり 「心の花を咲かせよう」
エンドロールのその後に:いきものがかり 「YELL」

エンディングとエンドロールの歌手が同じなのは趣味というより他に個人的に知る中で思い当たらなかったので。
他に適選曲があればそれを聞きながらでも!


【果し合い時ルール】
互いのHPは上限25。
それを各ターンの1レス目の秒数下一桁1~9より削り合い、0とした方の勝ちとする。

ただし、下一桁が0の場合にはノーダメージとし、先攻が相手のHPを0とした同ターン内に後攻が同じく0とした場合にはダブルノックアウトとして引き分けとする。

先攻・後攻は一番最初の登場or名乗りとする初レス時の1レス目、同じく下一桁の秒数が大きい方が先攻と見なす。

以上



※ギャラリーの皆様の参加に感謝しつつ。俺とリュクのやりとりのみ、現状は載せてます。
てのも一言参加してもらったのを伝言等で許可伺うのも申し訳なく、載せて問題なければ随時時系列を合わせて載せていきたいと思うのでコメントないし伝言で了承の旨頂ければ幸いです。

-side by リュクシース
事の起こりは去年の年明け、国を挙げての実弾演習に合間見えて戦って、預けた勝負の落とし前。

否、起こっていたというのならもうずっと前から。
結局互いに馬鹿なので、このぐらいしか方法を知らない。

「……ってこんな目立つところに果たし状置いとく奴がいるか!」

ここに居たな!
てか逆の立場なら俺も多分コレやるな!

だーっと走っていってぐしゃりと果たし状を握りつぶし、左右色合いの違う青い瞳を睨む。
多少芝居がかってても、まあここは許されるとこ。

「天狼セイリオス。この勝負、喜んで受けて立つぜ」

-side by セイリオス
要因としたのは預けた勝負の落とし前。
だが、そもの切欠であり始まりを思えば今というのは何という因果だろうかとふと思う。

理想の切欠は目の前のこいつで、発端はかつての神殿だった。

「ひっそり置いといたって、見つけてもらえなきゃぁ意味ねぇだろう?」

ぐしゃりと握り潰し此方を睨むそれに、笑い声を上げながら。
同時に、この場を見つけた2人へと顔を向けて。

「―悪ぃな、これだけは…ケリつけときたくてよ。」

そうして。
受けて立つ、と宣言したアイツへと向き直る。

「その言葉に感謝しよう。…人気者を独占すんのは気ぃ引けるがね?なんて」

すぅ、と一呼吸おき。

「なれば天蒼リュクシース、いざ尋常に勝負願おう。
 ……全身全霊、手加減抜きの全力でやらせてもらうぜ。これ程、この身昂ぶる機会もそうはねぇ。今にでも弾けそうなぐらい、調子いいぜ」

そのまま半歩を引けば構えを取る。
抑え切れぬ様を表すかのように、身を包む風が荒々しく吹き荒れた。


-イニシアチブ判定
先攻 リュクシース
後攻 セイリオス

-side by リュクシース TURN 1
全身全霊、手加減抜き、ときた。
既に奴の身を包む闘気は膨れ上がるようで、荒々しい風が蒼髪を吹き散らしていく。俺は軽く眉をしかめて、

「そいつぁ俺も手加減できないな。本気のお前怖ェもん」

わいわいと早くも賑やかなギャラリーを背に、その存在が勿体無くて泣けそうで、でも泣けないので代わりに笑う。
どうせ火蓋を落とせば互いしか見えないなら、今のうちに彼らへの最大限の感謝として。
すいと挑戦状を握り締めた片腕を高く掲げ、叫んだ。

「青コーナー、リュクシース!」

第一奥義・セルフレフェリー!!

一瞬しんとした空気があって、俺はそれを華麗にスルーしてびしりと対面する武人を指し示し、再び高らかに宣言する。

「赤コーナー、セイリオス!」

また数瞬の沈黙、と思いきやそれを破ったのも目の前の男。

「え、俺も青い方がいい」
「馬鹿言え青は俺だろ!お前暑っ苦しいから赤コーナーで丁度いいだろ!」
「それとこれとは話が別だ!」
「それに一般的に青コーナーが挑戦者なんですよ!」
「OK、始めようぜ」
「おま…!」

軽く会話を重ねながら、眼差しばかりは真摯に、欠片も揺るがぬ闘気もそのままに。
だからコイツは怖いんだ、と軽く口元を引き結ぶ。ぴっと手にした挑戦状を手放して、

一片の紙切れが空高く舞い上がり、
紛れ込ませたコインが宙に転がり落ちて、
地面に触れる、刹那。

戦舞台に硬く澄み渡るは、床と銀貨のそれではなく、刃と刃の噛み合わさる音。
開始の合図が剣戟なら、ゼロ距離スタートで丁度いい。

-side by セイリオス TURN 1
交わす軽口は何時も通り。
だが、この身は最早臨戦態勢にあり。

放られた挑戦状が宙に舞い、何時の間に紛れ込んだかコインがそこから零れ落ちて―

「―シッ!」

駆ける。

最初の数歩はそれでも緩く、だが打ち合う位置に予測がつけばそこから一気に加速する。

鍔元から抜き放たれる太刀は一息に、踏み込む最後の一歩と共に放ち同じく抜かれた刃と打ち合う音が開始とばかりに辺りに響き。



そこから始まるは鋼の応打音。


「…ぉおおおおおッ!」


引き、捌き、避ければ放ち。
避けきれぬ太刀筋が、互いの体に紅い筋を幾つも刻んでいく。

やがてそれが鍔競り合いになれば、改めてその視線が交わった。


「…俺は、この命果てねぇ限り生き続けるっ。テメェが何処に行こうが、この身続く限り。かつてテメェが行ってから戻ってくるまでも変わらずそうだったように…!」

単純に押し合う力勝負だけでは、恐らく分は悪い。
故に一時も気は抜けず、言葉じりにも力が篭もる。

「だからこいつぁ…最後じゃぁねぇッ!」

それを無理矢理に刀身を走らせ我が身を捻れば。
返す刃を、鞘から抜き放つそれと見立てて強引に放つ。


―鏡神映身流・抜刀術壱式 霧雨―


見えずしかして確かに降り注ぐ雨粒が如く。
五月雨の軌跡を穿った。

-a result of TURN 1
リュクシース:25-5=20
セイリオス:25-7=18

-side by リュクシース TURN 2
脳天、喉笛。心臓にどてっ腹。
一撃でも命中すれば死ぬ、それ目掛けて本気で刃を突き立てられるのは、相手が絶対捌くと信じているからで、別に命をくれてやっても構わないと思っているからだ。

そんなのを繰り返せばあっさり全身傷だらけで、けれど全く気にならない。
一際高く剣戟、ぎりと押し合う形になれば、はじめて間近に青の瞳。慣れた声が紡ぐ言葉は、いつも通りに暑苦しい。

「知ってるよ、お前は生きる」

低く返せば、馬鹿力でひねり返される剣、極端に短い予備動作で刃の雨が降ってくる。

「だからこいつぁ…最後じゃぁねぇッ!」

殆ど叫ぶような、気合の掛け声にしては随分と寂しい、
それには無言で、剣を返した。

いつもだったら軽口叩いて回避する、冗談みたいに速い刃の軌跡のひとつひとつを、全て受ける、捕えて弾く。

――約束をした。

かつて俺が世界を憎み、全てを捨てて神殿に登ろうとした時に。
歩みを止めて、世界を去ったその時に。

時を経て、ふらりと戻ってきた俺がはじめに見たのは、変わらず約束を守っているこいつの姿で、大陸を巡る俺の旅が始まったのは、多分その瞬間からだった。
だから俺は、こいつの理想を信じてはいないけれど、こいつのことは信じている。
信じているから、

「……俺は…ッ!」

雨の降り止むその一瞬に、一足踏み込んで、剣の柄を相手の刃の根元に叩き込み、喉元目掛けて片肘叩き込んだ。

-side by セイリオス TURN 2
――誓いはそこで生まれた。

かつての俺は、ただ1人の男のたった一言の言葉に惚れ込んで。
生涯に唯一人と剣を捧げた男の傍らに居るだけだった。

交わした約束の時。
自らの言葉で告げたそれは、捧げた男の台詞ではない。

目の前のコイツに告げたのは、紛れもなく己自身の願いであり理想であり。

交わした約束を信念とし、俺はそれを道とした。


「―ッ」

受け、弾かれ。
雨粒の軌跡は遮られる。


「……俺は…ッ!」

剣の柄を刃の根元に叩き込まれれば、力のベクトルとして流す事は叶わず手から太刀が零れる。

同時に引っ張られる腕に、上半身のバランスが僅かに崩れ。
その喉元に肘を叩き込まれれば、さすがに避けきれぬ。

「グッ!」

息が詰まる。
僅かばかりに身を捻り、太刀を握らぬ方の手を割り込ませて。
割り込ませた手に受ける肘の勢いを利用し、自らの手の肘位置をバネ代わりに後方へと少しでも逸らす。

「…お前は、鳥だ。どこまでも自由な――だから、今生とかは言わない。止まり木であるこの世界が在る限り―ッ」

苦しさは隠せず、声は絞り出すように。

そのまま、太刀を握っていた手で相手の剣を持つ拳を包むように掴めば、それを軸として肘を押さえる側の手を弾き回転するように相手の側面へ回り込む。

その回る動きで勢いがつけば、拳を裏拳の如く打ち込む。
だがそのままでは刃持つ側に背を半ばでも見せたままとなる。
それは隙も同然ならば、裏拳が当たろうが避けられようが、振りぬけば正面を向けて、つま先が零した太刀を救い上げ残った片手でそれを掴み、切り上げるだろう。

-a result of TURN 2
リュクシース:20-3=17
セイリオス:18-3=15

-side by リュクシース TURN 3
「この世界が在る限り―ッ」

苦しげな声に眼を細める。
「また」と「いつか」の約束は誰ともしない心積もりでいる。

それでも、こいつは、
喉を潰しても叫ぶし、手足を落とされようと進むし、幾度失くそうと信じることを止めないので。

「っと」

突然相手の体躯が視界から消えたかと思えば、側面から後頭部に迫る風圧。
上体を屈めて遣り過ごし、背を向けたまま呟く。

「お前が言うなら、そうなるだろうさ」

狼に翼を貸した。
神の獣に住処を追われた。
行く宛てがなくても笑っていた。

「鳥頭だけど、ひとつも忘れないでおいてやるから」

追撃の気配は下から上へ。今度は軸をずらして切り上げる軌道を避け、距離を詰めたまま振り向きざま横薙ぎに切り払う。

これが受けられるのは承知の上。

「でも今は、」

次の勝負じゃなくて、今目の前のお前を倒すことだけ考えている。
目指した男に結局勝てず仕舞いなんざ真っ平御免、クリーニング代は絶対に、

「……踏み倒す。」

風の王なんて豪いモノと契約してるこいつと違って、俺には大技らしい大技がない。
剣一本、振り回すだけで大体の修羅場は越えてきたけど、今回ばかりは――

ガスン、と派手な音を立てて地面に剣を突き立てる。身命に宿る風竜の力をそこに叩き込めば、同時に地面を吹き飛ばすように竜巻が巻き起こった。

一度も試したことのなかったそれは、案外と己の腕に馴染む。

ばらばらと瓦礫を散らして拡散しようとするエネルギーを、剣に全て纏って直に切りかかる。
幾度も目にした、奴がこう呼ぶ戦技に似せて。

――風神拳・爆旋一揆 零式

-side by セイリオス TURN 3
「お前が言うなら、そうなるだろうさ」

それはきっと。
自分自身に言い聞かせても居たのだろう。

信じる事を止めない為に。



「クッ!」

切り上げた一閃は避けられるも、返される横薙ぎへは刃を間に合わせて。
だが姿勢が悪いか、少々後ろへと飛ばされる。


「堂々と言ってくれ、る―――!?」

踏み倒すと抜かした奴へそう言おうとして。
目の前の光景に疑問符が混じる。

風の力を操る自分だからこそ余計に。
奴が何をしようとしているのか、その力の流れが見えて。

「まさか…!」

突き立てた剣に風が集約し、巻き起こる竜巻はエネルギーの渦となる。
荒れ狂い吹き荒ぶ風の力。
それを一箇所に集めて相手にぶつける事で解き放つその技は。


「テメェ、俺の十八番を―――ッ!!」

気付けば長年の闘いで染み付いた体が腕を動かす。
だが、最早それも遅い。

正面を肩口から一閃、同時に弾けた暴風に後方へと大きく吹き飛ばされた。

その口にしかし、笑みがあったのは自分でも何故だろうかと思う。

背中からしたたかに体を打つ。
上も下も分からぬような中で地面に投げ出されれば、受身の取りようもなかった。

体を反応させるにかかったのは一瞬か、はたまた数秒かかったか。

ピクリ、と指先が動けば次第に震える腕を使い身を起こす。

「…ったく、技らしい技を見せてみたと、思えば。よりにもよって…人様の十八番を模倣して撃つ奴がいるか、よ」

起き上がる傷口からは大きく紅い染みが広がり、地にも紅の水溜りを作った。


あぁヤベェ、随分と良い一太刀を無防備で貰っちまった。


ただでさえ、五体満足ですら簡単に押せなどしない相手にこの傷のハンデは大きい。

今のままでは――

「…クソッタレ。これだけは、テメェの中の『深淵』を殺すまで…使わない、つもりだったんだけどな」

杖のように剣を突きたてて、下を向く顔は前髪に隠れる。

「けど踏み倒す、なんぞ言われちゃぁ…出し惜しみで負けるのは、一番やっちゃぁいけねぇな」

ゆっくりと顔を上げる。その瞳は水色と蒼のオッドアイではなく。

「――――開眼。」


金色と成った瞳を、その身を、風が包む。

“其は古の縁に導かれし力

 祖が金色は吉凶の印が証

 吉となりては雄々しき英傑を刻み

 凶となりては荒々しき傷跡を残さん

 其が金色が示すは何れになるや

 今以ってその血に流れる記憶に契りを結ばん”


――開眼 金色童子――


短かった髪は僅かばかり、肩に垂れるほどに伸びる。
背には一対の金色の翼が広がり。
ゆっくりと開いた瞳には、両眼共に金色が映える。

俺からの勝ちは、そう簡単にはくれてやらねぇぞ」

垂れていた血が止まる。
だが応急処置もいいところだ。痛みは全く変わっていない。
それだけ見ればただ、体が一時的に動くだけ。

だが今は、それで十分。

「…本家本元を今一度、キッチリ見せてやる。どうせ模倣すんなら、此処で覚えて使いこなしてみせろ」


右の拳に風が宿る。
地を削り荒れる風はしかし、拳の中心へ吸い込まれていくように。
大嵐をも巻き起こす密度の風をその身の拳に集約する。

翼が開けば、一息に地を蹴り低空で駆けるように跳ぶ。
一呼吸に詰まる間合い。

「―風神拳」

肩越しに引き構えたそれを、撃つ。


――風神拳・爆旋一揆 零式

-a result of TURN 3
リュクシース:17-8=9
セイリオス:15-9=6

-side by リュクシース TURN 4
サプライズも武器のひとつ、とか見物人の一人が口にした言葉だったか。
見様見真似にしては上出来に、爆風の刃は相手のど真ん中を捕えて、吹っ飛ばした。

風が風が吹き荒れている。
斜めに走った傷を抱えて、やっぱり奴は立ち上がる。

「…クソッタレ。これだけは、テメェの中の『深淵』を殺すまで…使わない、つもりだったんだけどな」

顔が上がる、向き合った瞳はいつかの金色。詠唱と共に化身していく姿を眺めながら、俺といえば低く舌打ち。
珍しく不機嫌に唇を曲げて拗ねたようにぼやく。

「メインディッシュをアレにくれてやる気でいたとは心外だね」

何の因果か、互いに身の内に色々と厄介なものを飼っていた。
あいつは天狼、狂男爵。
俺のは風竜、――蒼禍。

奴がいつしか狂った金の翼の魔物を己が力と成したのに対し、俺の憎しみは多分永遠に昇華されない。
そんなモノにあいつの本気を使われるより、こうしてクリーニング代の取立てに来てくれた方が何倍もマシだ。

「…本家本元を今一度、キッチリ見せてやる。どうせ模倣すんなら、此処で覚えて使いこなしてみせろ」
「いいね、ご教授願うとするか」

心の底の捩れを隠して、笑う。
構えれば間近に、俺が真似たのより一回り大きな、蒼の嵐。

生身で受ければ砕け散る。

避けず、拳だけを凝視する。ギリギリまで近づくのを待ち、目前で渦巻く風気を全身に纏い奪って、飛竜の姿に化身した。

『ッシャアアァァァ!!!』

天高く轟く竜声。天地の狭間、激突する竜巻と爆嵐。

真空に空気が断裂し、空が割れる。
放射状に広がる烈風が、硬い竜鱗を容易く引き裂き、翼の一部を引き千切っていく。
台風の目の中心、唐突に風が凪いで、ふと無音。


「―――」

折角何かいい事でも言うチャンスだというのに、俺は顎を大きく開き、目の前の肩口に喰らいついた。
鋭い牙が肉に埋まる。そのまま首をぶん廻し、いまだ吹き荒れる暴風の宙に力いっぱい放り投げ――追いかけるように飛んで、上下をなくした空の上。
竜の姿を手放して、血塗れの腕で、そう。

「…最終奥義ッ」

――は、グーでパンチ。

-side by セイリオス TURN 4
―だから、そん時は殺してやる。


かつて目の前の男にそう告げた。
一度そうなれば戻れないから、と。


だが、今はソレを相手にしているわけではなく。
目の前のコイツを倒すのに全力を注がねばならない。

だからこそ、言葉で告げどそこに躊躇いはなく。

小細工が苦手なれば正面切って撃ち込むのみ。

『ッシャアアァァァ!!!』

「―!」

最早目前。撃ち込む動作も既に止められぬ眼前で起こる化身。
同時に打点がずれ、絡め取られた風に集束が解け始めていたそれは烈風と成して、風龍となった奴の体へその軌跡を刻む。

それが過ぎれば訪れる静寂に。
視線は交差し、だが交わす言葉はそこに在らず。

いや、考えていたのか。
迷っていたのか。

或いは、痛みで体の動きが鈍っていたか。

龍の顎でもって肩口へその牙が食い込むのに、反応が出来ずにいた。


「がっ、ぁぁぁああああああッ!!」

人が食らうのとは全く違う。
傷口から血が吹き出れば、同時に幾つか嫌な音もした。

そのまま、成されるがままに宙高く放り上げられる。

落ちるでもなく吸い上げられるでもなく。
重力の理を一時的に失くしたそこで、瞳に映った奴は人型に戻っていて。

「―――ざ、けんな」

最早その片腕には感覚がない。
だがまだ、諦めるにはこの金色が消えていない。

「…ッ、」

無事な腕の拳を握る。動くのはただこの一振りでいい。



動け。

「痛ぇ、んだよっ、このクソヤロォがァアアアああッ!!」

受けた拳も殴った拳も。単純な癖に、いやにどちらも伝わるそれは痛かった。

-a result of TURN 4
リュクシース:9-8=1
セイリオス:6-7=0

勝者:リュクシース

-side by リュクシース END TURN
「痛ぇ、んだよっ、このクソヤロォがァアアアああッ!!」
「うるせェそりゃこっちの台詞だバカ!バーーーーーーカ!」

子供みたいに怒鳴りあって、互いに渾身の一撃をぶつけて、空の上。
そのまま好き勝手な方向に飛んでいきそうなあいつの襟首を捕まえて、遠くへ吹っ飛びかけた意識の端、視界いっぱいに蒼穹が広がる。


浮遊感。否、落下感か。
――空へ、落ちる。



それはやっぱり錯覚で、辺りに満ちていた風のエネルギーが散ってしまえば、身体は地へと落ちていくばかり。
ああこれやっべェ、化けてる余裕ない……

浮けない身体は絶体絶命、まあそれもいいかなと落下に任せていると、激突の直前、それまで無反応だった相手の腕がぐいと俺の腕を掴んで引き上げた。

「わり……っでええぇ!?」

とん、と軽く足の裏を地に着けて、見上げようとした途端に大の男が真上にどさりと落っこちてくる。
受け止める間もなく下敷きにされ、仰向けに倒れてしたたかに頭を打つ、眼の裏に火花――

一度閉じて、開いた瞳に、突き抜けるように蒼い空。

「おーい…生きてるか」

ぶっ倒れたまま呟くように。
からっぽの頭とすっきりした胸で、
勝鬨を上げるよりも、今はこの色を見ていたいので。

-side by セイリオス END TURN
殴られた勢いそのまま、飛んでいきそうになるのを襟首を捕まれて留まる。
手放しそうになっていた意識が覚醒する代わりに、息が詰まるとか苦しいとか、とりあえず言いたい事はあったが口から出るのは吐き出す息の音だけだった。

落ちていく内に、金色の羽は端から溶けるように消えていき。
同時に金色だった瞳は元のオッドアイへ戻る。

ようやくそこで締まっていた襟首も緩み、テメェ、とばかりに無事な腕で掴んだ相手の腕。

「わり……っでええぇ!?」

それが結果的には、激突の直前でアイツを立て直し自らの下敷きにさせたとまではさすがに偶然の産物だったが。

「おーい…生きてるか」
「…ああ、何とか、な」

搾り出すような声でそう返して。ふぅ、と一呼吸。
開いた瞳が映す、アイツが見る先と同じ空を見上げる。

冬の澄んだ空気が見せる空は、何よりも蒼く。

「―全く、馬鹿みてぇに高くついちまったクリーニング代だぜ」


最後の最後で、踏み倒された。

「…お前の、勝ちだ」

だがそう告げた口が象るのは、不満そうなへの字ではなく。
何処か満足そうな笑みだった。










-After the END TURN of 1 side by セイリオス
『ジジイ』

【天龍紋の開放をせず、天覇風龍斬も使っておらん。治癒能力の神速化を差し引いても、この使用時間故じゃろう】

『じゃぁ、この気だるさだけで済むのか』

【…いいや。体を強制療養という睡眠状態にさせるまでの猶予期間が生じているだけじゃ。今まではそれが生じる事なく、限界まで体への負担をかけて力を使っておったからの】

『何時までだ』

【今のお主の体からすれば推定3日、と言ったところかの】

『睡眠状態の期間は?』

【早くても、年内は怪しいかもしれんの】

『…チッ』

意識の内で交わされる会話。
自らの武の基礎を学んだ、全てを映す鏡の神である師。

観客勢をも最終的には考えずほど全力で。
しかし、振舞い酒と銘酒を片手にはしゃぐアイツの姿が目に映る。


―見送りが出来るかどうか、怪しいか。


何時もの自分なら、間違いなく意地でもと言うのだろうが。
こればかりは避けられず、しかして承知の上で力は行使した。

そこに対しての後悔はなかった。

だが、この一言だけは眠る前に伝えねばなるまい。


「―――リュク」

震える体を無理矢理起こし、その背に声を掛けて。
ただ無言で。無事な手の、握った拳を突き出した。

-After the END TURN of 1 side by リュクシース
麗しき青の女王様、口にするのはこれで二回目。
抜いたコルクを空に放り投げて、
無事だったギャラリーの皆さんにグラス一杯の振る舞い酒。

乾杯をすれば次々に果たし状の追加オーダーが飛んでくる。

「んじゃ、今日出来たら梅花君と、…LJFは明日な!
ったく命がいくあっても足りねぇよ…」

ボロボロだった身体も「お客様の中に腕のいい治癒師はいらっしゃいませんか!」と聞いたら普通に居たので応急手当は万全。

あれ、でもあいつ金ちゃん出すと身体だけじゃなくダメージ受けるんじゃないっけ…

「―――リュク」
「ん?」

振り返ろうとしたら丁度声がかかった。
振り返ったら拳を突き出された。

反射的にごつん、と拳をぶつけ返して、顔を見る。

「何だよ、改まって」

-After the END TURN of 2 side by セイリオス
「何だよ、改まって」

ごつん、とぶつけ返された拳を眺めながら。

「金色童子を使った以上…多分、見送りにゃぁ行けそうにねぇんでな」

苦笑い、とも言い切れない笑みを浮かべた。


いきなりその時が来ると眠りに落ちるのか。
それとも徐々に睡魔に襲われるように崩れていくのか。

それもまた、分からず。

なれば我侭の効くのが今の内。

だけど言いたい事は、有り過ぎた。
何から言えばいいか、分からなかった。

言おうとする言葉だけじゃ足りなくて。
けど言い切ろうとするには余りに言葉が多すぎて。



だから。

ぶつけた拳のその先に在る、相手の顔を真っ直ぐに見つめて。

「…行ってこい、相棒」

その一言に、全てを篭めた。

-After the END TURN of 2 side by リュクシース
「…行ってこい、相棒」

真正面から向き合って、飾りのない言葉で強い瞳で。
いつもそんな立ち位置だったけど、そんな風に互いを呼んだことはなかったかもしれない。
俺達は、どこもかしこも似ているのに、つまるところ全然似てなかった。

だから、――「ああ、行って来る」。それだけ言って握手して、綺麗に幕を閉じればいい、解ってても素直にそうできない。
最短距離でぶつけられる視線を、僅か外し、言う。

「どこに居たって変わらねえよ。だから、」

並び立つ。抜き去る。また抜かれる。そうやって、
多分俺達は、生きていく。

「精々、また俺に追い抜かれないよう生きろ」

笑って、どんと相棒の胸を叩いてやった。



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