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工房・裏

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「何とか、出来たな」

自室。
机の引き出しから小箱を取り出せば、その中にある物を確認する。
既に期日は過ぎてしまったが、形にする事に成功した。

「さて、それじゃぁ渡しに行くか」

それを手にしまい、男は部屋を後にした。








それは一昨日の事。


「…うし、今なら大丈夫だな」

彼女が居ない隙を見計らい、地下の工房奥へと進む。
資料となる本や道具が並ぶ棚の一角。突き当たりにあるそこへ辿り着くと、その壁を『押し込んだ』

同時に、僅かな擦れる音と共に近くの棚がないスペースの壁が動き奥に入れる隙間が現れる。


「・・・・」


そこへ入り闇の中へ男の姿が消えると。
隙間もやがて元の壁へと戻った。



“其は悠久にして天地顕現より在りしもの”



暗い中に緑色の魔方陣が描かれる。



“失われる事叶わずして止まる事許されず”



照らされるようにして浮かぶそこは、狭く静かな部屋。



“流れる事を宿命にして常に交わり続ける理”



空気の流れすらあるのか見えぬ中で何故かそこに漂うものは濃い。



“其に与えられし名の下に司る者へ願う”



照らす魔方陣の上に立つ男が片手を眼前へかざす。



“其が持つ理と力を秘めた輝きの具現化を”



その手の先が光り、やがて収束すれば一つの欠片が宙に浮いている。
それを静かに手にとれば、大きく肺に溜めた息を吐いた。

「……ふぅ、成功したな」

額に浮かんだ汗を拭う。


『盟約が何の為にあるか知っているだろうな?』

突然、何処からともなく声が響いた。

「…当たり前だろ。直接的にお前の力を他者に付与する事は厳禁だよな」

『その通りだ。なれば、この術が私を以って行う事自体が既にどれだけ無茶であるか分かっていただろうに』

「…ああ。こうすれば、お前の力を一部であり制限されたものであったとしても他者に付与する事になる。ただでさえ、精霊王というトップの力を輝晶化しようってんだ。針の穴を通すよりもキチィのは承知してたさ」

『それでも、この秘術を?』

「無論。…そんだけ大事なんだよ、許してくれ」

『長い付き合いだ、一度決めたら頑固なのは知っている。故に、そこをもう言いはしないがな。…お前が渡した相手がその加護を望む時には、力を与えよう。それは輝晶化に成功したお前への褒美だ』

「…ありがとよ」

礼を聞き届けたか否か。それを最後に声と気配はそこから失せた。




――秘術。
何にでもある、いわゆる門外不出の技術。
それは時として教えだけでなく行う事をそも第三者の目に触れる事自体許さぬ場合もある。

男の今のそれは、風の輝晶化。
自然属性のその力を形にして留めるもの。
いわゆる魔法効力を秘めさせ、使う事でその効力を発揮するマジックアイテムと意は同じである。
ただし、それと違うのは器となるものは存在せず、効力を秘めたまま形として納めなければいけない必要性がある事。
また留めようとするものの内に秘める力が大きければ大きい程に効力と希少価値は上がるが、難易度はその比にならない。
特に男が契りを持つのは精霊の王。難易度など推し量る方が面倒というものだろう。

「………」

その手元には、雫の形をした緑色の宝石とも呼べるものがあった。





それは、少し前から始まった作業だった。

男が住む城の下には、魔力の元たるものが流れる地脈の類がある。
普通の道具類の精製にはさしたる影響はないが、魔具の類の場合にはそれらの力を借りる場合もある。
その為、工房部屋の近くにして別として切り離し専用の部屋を設けていた。

ただし、そこは不用意に乱されれば自然な流れも狂わす事になりかねない。
その為の「隠し部屋」仕様。



とは言え。
そもそもが道具作りを頻繁に行う事をしなかった為。
設けてはいたものの、その仕様もありすっかり存在を忘れていたのが実情なのだが。

今回の件を思いついた際に、思い出さねば開かずの部屋と化していた事だろう。
それが返って、同居人である彼女にも知られず――知らせようにも家主が忘れていたわけだが――事を運べた。

一日目には環境の調整。
二日目には地脈からの魔力の充填。
三日目は詠唱にして具現化による施工。
四日目はそれを工房にて道具化。



そうして、今それは男の手元にあり。
やや落ち着かぬ顔のまま、隣室の扉をノックした。
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