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28

その先へ

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少し前までの話。
男は京の武闘会で激闘の果て、負った怪我と降り掛かる反動に崩れ落ちた。

自室で昏々と眠り続ける男に意識が戻る気配はなく。
ただその傍らには、それを見守る姿があり。



その枕元では、一振りの愛刀が誰にも気付かれぬように淡く淡く輝きを放っていた。
「…久し振りか、こんな呼び出しされんのも」

何処まで続いているのか。
いやもしかしたらすぐ傍にあるのを気付けていないだけかもしれない。

果てなく白く続く世界に、一人座っていた。


【どうせ体が目覚めるまでには今暫くの時が必要だ。惰眠を貪り続けるのも飽きるだろう?】


突然耳に届く声。どちらともなく響いてきたその後に。
眼前が一際眩く光れば、白の世界よりも純白な一匹の龍が現れる。

その体躯、此方を見つめるその目元から鼻先までだけでも自分の体ほどはあるだろう。
そもそもその大きさが本来のサイズかどうかも甚だ怪しい。


『相変わらず、怪我をせんでは済まん男だ。どれだけ我が身を傷つければ気が済むのか』


先とは違う、凛と響くような声。
その後に、龍の傍へと蒼のような翠のような。たおやかなローブに包まれた人物が現れる。


「…惰眠もたまにゃぁ悪くねぇんだけどな。てか、呼び出し早々説教か?今日は。え?精霊王に天龍よ」

肩をすくめて目の前にある二つの存在へと問う。



【説教など、この手の状況に関して言ったところで貴様には効果があるまい。皮肉の一つが意味としてせいぜいだろう?風の王よ】

『…フン。分かっているとも。だが私の風は貴様の担架代わりではない』

「あらま、ご機嫌斜めか。…まぁ、さすがにな。あの怪我であれだけ動くにゃ金色童子で騙し通すしかなかったし…それが切れりゃぁ、ぶっ飛んでた体のリミットも元に戻る。そうすりゃご覧の有様だ」

【あの槍の娘、中々に惜しい名槍の使い手であった。作は知れぬが、魂の篭もる武具は久しく見ていない】

『それに渾身の一太刀を逸らされたのだ、詰めが甘い』

「ちぇ…まぁ、“ずらされた”のはちと驚いたけどな。逸れる事はねぇとばかり思い込んでたのは慢心だったか」


“天覇風龍斬”は、自らの全てを合わせた奥義にして最強の一手だ。
必殺になっていない事を指摘されれば、そればかりは反論の仕様もない。




「だけど、金色童子はこれ以上の出力はまだ上げられない。あれが今打てる最強の一撃なら、精度を高めないとな」

『その通りだ。天魔の指輪を用いればより“それ以上”に成れるかもしれんが…今度こそ命の保証は出来ん』

「…そいつぁ困る。徒にゃ死ねねぇよ」

【ククク、それはあれか? 今お前の傍にいる者も関係しているのか】

「?誰か居るのか?」

『一人の女が貴様が部屋に運び込まれてから看病しているぞ』

「…!」

精霊王の告げる言葉に、驚きの表情を浮かべる。
そうして、彼女が此方に越してくる時期であった事を思い出せば自然と顔に曇りが差した。

【…人の子よな。百戦錬磨にして我らを従えようとも、感情に揺さぶられるか】

「否定はしねぇよ。その“人たる感情”があるから、俺は彼女が必要なんだと思えるんだ」

『…。全く、これ以上はそこの議論を交わしても交わるまい』

【よかろう、そろそろ目を醒ますがいい】

「ああ、そうさせてもらう。何時までも、起きねぇままに看病してもらうわけにゃぁいかねぇや…いや、それよりも」

『…なんだ』

「なんでもねぇ。まぁ、今後も死なねぇぐらいに頑張るから宜しく頼まぁ」

『フン、そう願いたいものだ』

【良いだろう、次こそは徒に我が爪は折るでないぞ】

龍と風は、踵を返すようにして宙に溶けていく。
そうして白き部屋に見えた視界は光に包まれて―――――――――――





「・・・・・ん、・・・」

最初は世界がぼやけて掴めぬ視界も、やがてピントが合ってくる。
そうして見えた世界に、彼女の顔が映った。

「・・・・・・パーシャ?」

その顔を見て、安堵する自分に気付けば。

「・・・おはよう」

何を言おう、と考えるよりも先に口が動いて。
あぁそうだなと後から納得が追いついてくる。

それを聞いてか、目覚めたのを確認してか。
微笑む彼女は暫し口を開かず。だが、

「・・・お早うじゃないわよ馬鹿!!」
「痛ぇっ?!」

我に返るようにして出た言葉と共に、額を軽く叩かれる。
上げた悲鳴は、額への一撃よりも無意識に避けようとして動きかけた体に走った痛みから。


だがそれでも、笑みが崩れずあったのは―――――。









―――Side セイリオスver.

でした。下書き自体はそれこそ2月頭にはあったものの。
後ろたる自分が忙しくてロクに余裕が出来なかった、というのと筆がやたら重くあって書くに書き出しが出なかったのもあり。ようやくの今頃完成。

向こうの伏線とはまた別の。一つの可能性としての伏線を此方は此方で残しつつ。
最後のやりとりは何とも似合うお約束だったんじゃないかなぁと ←
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