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彼方へ

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12月の中頃。

この時期の海はとてつもなく冷たい。
風も強くなりやすく、吹き荒れるそれは刺すような寒さを伝えてくる。

「……」

無言で見下ろす手の中には、鈍く光を放つ輪があった。


寝てる日々が続いて。
やがてその姿が消えた。

それでも、慌てる事もなければ嘆く事もなく、ただ一日一日を過ごし続けた。
居た頃は任せきりだった家事も、最初はまごつきながら。やがて気付けば、彼女の部屋すら自分の部屋のように掃除している自分が居て。
未だに凝った料理は作れないが、簡単なものはそれでも出来るようになった。

何時かふらりと帰ってくると信じて。
そして、ただ一言が欲しかっただけだった。

突然寝続けた事も、居なくなった事も。それで全て、片付くと思っていたから。



「……」


あらゆる事象が過ぎて。
自分の身の回りも大きく変わっていった。

それでも、日々を過ごす事は変わらない。

「代わりだとか次だとか……そんなんじゃねぇけど。でも、足だけ前進んでたって意味がねぇ」

掌の中にあるそれごと、握る。
そうしてそのまま大きく振り被って――――――――――――――――――――――――投げた。




前へ歩こう。
何もない日も、何かあった日も。
成功した日も、失敗した日も。
勝った日も、負けた日も。

その全てを過ごして、今の俺が居るのだから。
過ごした過去を思いはしても。振り返る事はあっても。そこに置いてきてしまったら、“今”はない。


「…来週がクリスマス、か。早ぇなホント」

海に背を向けて歩き出して暫く。
その言葉を呟いて立ち去った後の海へ、白い粉が舞い始めた。
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