--

スポンサーサイト

スポンサー広告  コメント(-)  トラックバック(-)
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
12

ワンズよりエージュへ

小話 comment0  トラックバック(-)
虹雅京を出立し、一路北上。
ワンズとエージュは隣国にあり、距離も道程も前の山越えに比べればどうという事はない。

敢えて問題を挙げるとすれば。
海岸と山に挟まれた街道の為、この時期は風が凍てつくように冷たいという事ぐらいだろう。

「風を使えるってのは、こういう時も便利だよなぁ」

外套を羽織り直しつつ呟く。
木々が風に揺さぶられる中、男の衣服どころか髪一つ、風に揺らされてなどいなかった。

そう。
男の傍に来て、全ての風が止んでいる。

魔法というよりは精霊使役で風を扱う男にとって、こういう細かい芸も長い付き合いなればお手の物だった。





「…ん?」



右手に見える森の奥から、視線を感じる。
国を出てもう2日目の午後。丁度中間を過ぎた頃であればあるいは。


「出てこいよ。隠れたまんまなら先急ぐんでもう行かせてもらうぜ」

そう声をかければ、ざわつく気配の後、数人が出てくる。
毛皮に刃物、分かりやすい盗賊の類か。

「…へへっ。今の時期、エージュへわたる人間が多いからな。
 テメェは少し出来るみてぇだが、今日も稼がせてもらうぜ」

何と言うか。
自分とて、いわゆる賢人などではないが。
野にある盗賊系は、どいつもこいつも頭の悪い笑いしか出てこないのは何故なのか。

同時に、襲いかかってくる3人に向け構えれば、まずは正面へと脱いだ外套を目くらましに放り投げ、右手の盗賊へと距離を詰める。
剣の軌跡は分かりやすい縦の大振りなれば、鞘ごとぬく刀の刀身を刃に横から当てて外へずらす。
そのまま、空いた右手で首を締めるように掴めば、飛び掛ってきた勢いをそのままに一回転させ、ようやく外套をどけた真ん中の奴へと放る。

「うおっ」

キャッチどころかぶつかる2人から逸れるように一度刀を振り鞘を飛ばせば、そのまま踏み込み正面から串刺しにする。深く刺さった刀は放置し、残る一人へ迫れば、先程の鞘が当たり目元を抑えていた。
無防備な胴へ、踏み込む重みを乗せて拳を放てば、苦悶の声を上げて崩れ落ちる。



そうして、鞘を拾い刀を抜けば。
残りは、リーダーらしき男と奥に控えたフードを被った女だけになった。

「チィ、ここまで手練だなんて誤算だ…おい!」
「ああ、任せろ!風の精霊よ―――!」

焦った男が、女へと声をかける。
何をするかと思えば、女は杖を掲げて風の精霊を呼び出し、巨大な風の刃を放ってきた。


だが、迫った刃は目前で雲散霧消してしまう。

「なっ」
「馬鹿な!?」

「俺に風魔法は聞かねぇよ。使役する精霊のレベルが違う」

愕然とする2人へ、そう告げる。

「そんなはずは…私のは上級精霊だよ!?それを呼び出しもなく打ち消す階級の精霊なんて…!」

わめくように、自らへ言い聞かせるように叫ぶ女。
それを聞けば、上級精霊を使える奴がなんでわざわざ盗賊の仲間やってんだかと溜息をつきつつ口を開く。

「…精霊王に例外はねぇよ」

その一言に、男は何の事かと眉を顰めるだけだったが、女の表情は一変した。

「まさか…そんなはずは」

「嘘だと思うなら、テメェで打ち消してみな」

ぐっ、と握る拳へ風が宿る。
それを打ち出すように、拳を振りぬけば横殴りの竜巻が発生した。

―風魔症・咆龍旋―

迫るそれに、女は慌てて精霊を呼び出すが。
それごと、2人は竜巻に飲み込まれて消え失せた。



「相手が悪すぎたな。伊達に『斬風王』の称号を持ってるわけじゃぁねぇんだぜ?」

最早居ない相手にそう告げて。
落ちた外套を拾って汚れを叩けば、再度それを纏い先を目指した。
スポンサーサイト

comment

post comment

  • comment
  • secret
  • 管理者にだけ表示を許可する
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。