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26

暗く深い洞穴の奥底で

1つの影に動く気配は無く。時折、気泡が漏れるだけ。


男がこの装置の中に入れられてから。
1月半は過ぎ、もうすぐ2ヶ月が経とうとしている―










夢を、見る。

これは過去の映像で。夢であるのだという自覚が自分にはある。

だが何故だろう。それでも、醒めようとはしない。
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22

辿ってきた道

セイリオスという男の過去を、此処に記す。



12

決着、そして―

「…その姿に成ってから一刻は過ぎた。そろそろ、限界だな」
「何?」

軍服の上着を脱ぎ捨てた体が止まる。
と、腰に挿していた刀と双剣が突然支えを失ったように落ちた。

「!?」

更に。
ネックレスとして付けていた団証までもが、まるでそこにつけるべき首などないかのように“擦り抜けて”落ちていった。

慌ててそれを掴もうとするが。
その手をさえ、空しく擦り抜けていく。

「貴様の体は、既に限界を迎えつつあるのだ。天魔の指輪による生命力の著しい消耗、金色童子による体への負荷。この2つがあれば無理もない。むしろ下界人でここまで保った方が、驚嘆に値する」

「そうか…もう限界が近いのか」

「その限界を迎えた時、貴様の体は光の粒子となってとけるだろう。欠片すら残す事無く」

「…なら、もうケリをつけねぇとな」

「…貴様ッ」
敵のその目に再び怒りが灯る。

「簡単な話じゃぁねぇか」

左半身を前に踏み出し、右拳を腰だめに構える。

「限界を超えちまう前に、テメェを倒して帰る」

光が、拳へと収束していく。

「いいだろう、ならばその願い諸共―」

敵はその白き翼を広げ

「消し去ってくれるわぁッ!!」

向かってきた。


「鏡神映身流奥義、天地壊乱拳」

それは、師が得意とした決め手の奥義。己の生命力を拳に込め、敵を打ち貫く技。

「―を、弐代目正統後継者の名を以ってここに改名する」

口の端に笑みが浮かぶ。

「俺の中に眠る、戦神たる狼よ。その牙を以って我が敵の喉笛を食い破れ!!」

敵との距離は、もう間もない。

「鏡神映身流奥義、」

光と共に拳を打ち出す。

「天、狼ぉ拳ぇぇぇんッ!!」






―静寂










ビエル山脈。
秋の紅葉に彩り始めた山々は、綺麗な色に染まり陽光に揺れる。

その中に聳える狼達の城砦。



それがよく見渡せる、切りだった崖。
そこは、男が気に入っていた場所だった。



そこへ、空から何かが降ってくる。

それは、男が使っていた刀であり双剣であり、軍服であり団証。
刀と剣は地に刺さり、そこに被り柄にかかるようにして軍服と団証が落ちた。


風が吹き、軍服が揺れる。
不安定に柄に支えられているにも関わらず、その軍服は飛ばされていく事はなかった。

まるでそれは誰かの帰りを待っているかのように。



08

たった一人の闘い

金色の瞳
金色の髪
半ば自ら発光しているように見える体

そして

耳元と背中に生えた、金色の翼


「…テメェは言ってたな。翼を失ったならば堕ちていくだけだと、二度と飛べんと」

そう。力を引き出し、今のように生えた翼と共に挑んだが敵わず。
堕ちていく中で、その台詞を叩きつけられた。


「そんなのはなぁ、諦めなきゃいいだけの話だ」


構える。

「翼を失ったのならば、また生やせばいい。飛べなくなったならば、また飛べるようになりゃぁいい。二度と、なんてなぁ…」

翼が広がる。

「諦めたヤツの捨て台詞なんだよッ!!」



宙を、光と成って駆けた。
06

深く、とある場所で

「何故、貴様はまだ諦めん」
「諦める理由がねぇからだよ」

ボロボロになった体を引きずりながら、未だ健在な相手へと向ける瞳に諦めの色は無い。

「俺ぁ、あいつらに任せてきた。もう、今は自分の事だけ考えてりゃいいからな。動ける以上、戦える以上、俺が諦める理由はどこにもねぇ」
「馬鹿な事を…自力で力を引き出したのは、下界人の癖してよくやったと言えるが…それですら敵わないと分かっていて、その力が切れた今の状態では無駄死にだぞ」
「いや…まだ、最後の手が残ってる」

そう言って、懐から取り出したのは1つの指輪

「これを使えば、更に上の力が引き出せる」
「!…貴様、そんなものを持っていたのか。確かに、それがあれば力は引き出せよう。だが、今ですら崩壊しかけてる体をギリギリで繋ぎとめているお前が、それを使えば―」

冷たい瞳が、静かに俺を射抜く

「―その体、跡形残らず消えるぞ」

返すのは、笑み

「やってみなきゃ分からねぇだろ。どっちみち、テメェを倒すにゃもうこれしか手は残ってねぇ。これでテメェを倒して」

指輪を静かにはめていく

「俺は…あいつらの下へ帰るッ!」

眩い閃光が、深い闇を照らした