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07

終焉の頃 幕

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港は多くの人々でごった返していた。

残る人、旅立つ人。
もう二度とそこを交える事は叶わぬと互いに知って、許された後僅かばかりの時間で別れを告げる。

本当に残すところはもう数時間もなく。
特に混雑を極める待合所に入ると足を止める事すらままならない。
見逃さぬように視線を巡らせればやがて、それが一人の女性を視界に収めて留まりそちらへ歩いていく。
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終焉の頃 3

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残された期限は、日にちという単位すらあっという間に奪っていく。
移動するその時間も。何かに目を止めるその時間も。普段ならば気にする事もないその経過すら、確実に時は刻み奪っていく。

やはり、終わりが分かっているからこそ、しかもそれが間近だからこそ初めて実感するのだろうと思う。
たかだかヒトの種の一生ですら、まだ今の自分は終わりまでの残り時間を今のようには感じないのだから。


そうして過ごし失っていく時間が残す。
もう僅かに、数時間。



全ての人が行き交う、その国の門に一組の姿はあった。
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終焉の頃 2

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バラハンに着いて暫く。

案内された王宮の執務室では、数年前と変わらぬ姿でその席に座す王が居た。
自分が入ってきたのに気付けば、顔を上げ「おぅ、おかえり」と声を掛けられる。

それは、まるで近くの店かそこらまで行ってきたぐらいの。
“何時も”と変わらぬ台詞に、口元は緩み。

「ああ、ただいま」

と自らも返した。



02

終焉の頃

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想い思いに生きる人々は己が遣り残した事の為に。
願いを果す為に。或いは、その欲を解放する為に。
かつてない程騒がしく、世界は動いていた。


男もまた。
友との仕合を果し。最強の相手との仕合も果たして。
願いが叶った星屑の宴のフィナーレを終えた。


僅か残り数日。
時間して最早数十時間。


悩む時間すらその僅かを削り、残る行動の選択肢を失くしていく。


「…行くか」

悩んだ挙句。
男はその夜、エージュを発った。
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魔島への路

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ビエルの冬山を駆け下りて麓で一夜を過ごし、翌日は南下すればバラハンへ続く街道を進む。

途中、通り掛かった乗り合い馬車に乗せてもらい、揺れるままを心地よく愉しみながら。
道中で二夜目を迎えれば、焚き木を囲い乗り合わせた他の客達と談笑する。旅の話をする一方で、彼らが話す日常や旅の話はこれだけの年月を過ぎた今でも新鮮で、面白い。


ビエルを発ってより三日目。

バラハン国内へと進むという乗り合い馬車には途中で別れを告げた。
国内を通り、中での手続きを通して船に乗る方が段違いに安全であり簡単である事は理解していたし、すっかり打ち解けた他の客達からも説かれたが、事情があると話して首を振った。


まだ、アイツらのところに行く“時”ではない。


やや遠回りになるのは承知しつつ、迂回ルートで海岸を目指した。
海が近くなるにつれ、吹き荒ぶ風は再び寒さを増す。

それでも近くまで馬車に乗れたのが幸いだったか。
夕刻を迎える前には、目指す先を見据えられる海岸へと辿り着く。

停泊所のある港へはまだ遠い。



だがここで夜を明かすのも得策でなければ、海から離れれば本末転倒だ。

已む無しかと判断すれば、自らの周囲を強風が囲いその身を浮かす。


やがて宙空へ、風を纏いて飛び上がればそのまま海の向こうに見える島を目指した。

圧倒的な速さはやがて、夜を迎える前に島の端へ我が身を運ぶ。



見上げた空は、どこまでも灰色で。
何時か聞いた話を思い出す。


「…スルトガルム、か。」

それはかつて、目の前に浮かぶ島、灰色の空の下に与えられた国の名前。


ふわりと、地面に降り立って。
入国手続きをすべく、首都を目指して歩き出した。